赤いドクター〜科学と臨床をつなぐharipo式の挑戦②〜

haripoの歩み

北斗病院との共同研究は毎週木曜日に実施することが決まりました。北斗病院(というか加藤先生?)は決まると動きが速く、倫理委員会も爆速で通り、翌週からさっそく北斗病院の職員の方々を対象に実験がスタートしました。

このスピード感、どうやら加藤先生は「赤い彗星」のようです。

実験の手順は、まず問診を行い、次にMEG(脳磁図)による計測を行います。その後、1カ所だけに鍼を施し、再びMEGで脳の変化を測定。最後に、症状の変化を確認し、アンケートで効果を評価するという流れでした。

MEGとは、脳の活動をリアルタイムで可視化できる高性能な装置です。数億円もするこのマシンを、自由に使わせていただけたのは、本当に幸運としか言いようがありません。

北斗病院にはさまざまな職種の方が働いており、それぞれの業務内容によって訴える不調も異なります。そうした違いが、使用するツボの傾向にも現れてくるのは興味深い発見でした。

例えば、同じ腰痛でも、看護師さんと事務員さんとでは、効果の出やすいツボに違いが見られました。

看護師さんには「中都」を、事務員さんには「漏谷」をよく使いました。それぞれの職種の体の使い方や負担のかかり方が反映されていると思います。

研究を本格始動させる前に、北斗病院の理事長・鎌田一先生との面談が行われました。鎌田先生はテレビでもたびたびお見かけする著名な医師で、デギン・ザビ公王を思わせるような重厚な威厳をまとっていらっしゃいました。

気圧されないよう、丹田にぐっと力を込めて研究の概要を丁寧に説明したところ、鎌田先生から一言、

「末期ガンの方の痛みや痺れに、結果を出せますか?」

その瞬間、「ここで躊躇していたら、未来の扉が閉まってしまうわ!」そんなフォウ・ムラサメの声が頭蓋に響いたような気がしました。

「鍼施術は、痛みや痺れに苦しむ方々のお役に立てるはずです」 私は、そう力強く答えました。

その後、驚くほどのスピード感で、北斗病院のプロジェクトが動き出しました。

鎌田先生のご紹介により、その日のうちに、脳梗塞や脳出血の後遺症に苦しむ方、末期がんによる強い痛みに悩む方、三叉神経痛を訴える方々が、次々とMEG室に送られてきました。

患者さんのためになると判断すれば、即座に行動に移す鎌田先生の姿勢に、私は驚かされると同時に、深い尊敬の念を抱きました。

一人の患者さんに対して、鎌田先生をはじめ、担当医、看護師、ご家族、そして加藤先生や鴫原先生までが勢ぞろいします。 そのすべての視線、期待、そして不安が、私ひとりに注がれる中、施術を行わなければなりません。

あのときの心境は、Ζガンダム最終回で、シャアがパプテマス・シロッコとハマーン・カーンという二大ラスボスを相手に、たった一人で立ち向かったときの気持ちに近いものがあったと思います。そんな戦いが、1日の中で何度も繰り返されるのです。

さらに、 数億円のMEG装置の中に入り、たった一本の鍼で結果を出さねばならない、 これ以上ないプレッシャー。

この時はharipo式が冴え渡り、全身汗びっしょりになりながらも、しっかりと成果を出すことができました。

haripo式の真価は、どんな状況下でも、患者さんの状態を冷静に捉え、必要な施術だけに集中できる点にあります。周囲の空気や緊張に流されず、ただ目の前の方にとって最も必要な一手を打つ。 そのシンプルな力が、まさに功を奏した瞬間でした。

この経験を通して信頼を得ることができ、以後、鎌田先生をはじめとする医師の方々から多くの患者さんをご紹介いただけるようになりました。

つづく ≫ 〜科学と臨床をつなぐharipo式の挑戦③〜

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